舌を見てみよう

★舌の大きさ重さ

中身の無いうわべだけの巧みな言葉を「舌先三寸」とも言いますが、日本大百科全書によりますと実際の日本人の舌の長さの平均は、男7.3センチメートル、女7.2センチメートルとのこと。ギネス記録の世界で一番長い舌は、アメリカ人男性の10.1センチメートルです。
ほぼ筋肉でできている舌は、実は見えていない根元部分が大きく、舌の重さは約350500グラム。かなりの重さがあります。

★美容にも舌が大切

そのような舌の正しい位置とは?
上顎の窪みに沿って、そっとおいて置くのが正解です。
しかし、姿勢が悪かったり、または口呼吸などで舌が上がらず、舌の筋力が低下すると下の歯に当たるくらいまで下がってしまいます(低位舌)。

舌に筋力の低下はフェイスラインのたるみに影響してしまうので、下がった舌を上あごにつけるだけでもフェイスラインがすっきりします。また、舌が下がり前歯の裏を持続的に押すことになってしまうと、歯並びにも影響します。出っ歯や反対咬合、または上と下の前歯が唇側に傾き閉じない開咬になってしまうこともあります。

舌は一固まりに見えますが細かないくつもの筋肉の集合です。舌の筋力がついていないために、正しい位置に保てなくなってしまうのです。舌は姿勢を維持する深層の筋膜ラインであるディープフロントラインに位置するので、舌の筋力の低下は全身の姿勢も崩してしまいます。

★舌は複雑


舌は、食べる、話す、呼吸という人間が生きるために不可欠の活動に必要です。
噛みやすく奥歯の上に物を乗せたり、噛み切る位置へ食物を運んだりするのは、舌や唇の仕事です。
このように多機能であるが故に舌は多くの筋肉で構成されていて、形を変化させ上下前後左右に動きます。舌を動かす外舌筋4種、舌の形を作る内舌筋4種と細かい筋の集まりです。
表面は薄い粘膜で覆われて微妙な舌触りや味がわかる鋭い感覚があります。舌は人間の体で感覚が一番敏感な部分でもあります。
その精度は1mm間隔に2点を刺激した時でもしっかり2点と認識することができます。指の先でもこれを2点と認識することはできません。
ちなに一番鈍感な部分は背中で5cm間隔でも認識するのは難しいです。

また寿司や天ぷらやラーメンのように世界進出したものも多いですが、日本料理は外国人に受け入れられていないものも多いようです。
これは、外国人にとって日本料理の味付けが繊細すぎる事が理由として挙げられるそうです。
日本人は昔から繊細な味付けを好んでいたこともあり外国人に比べると味を味わう感覚器官の「味蕾(みらい)」が多いとのことです。

このように舌は多機能で敏感な器官なので、構造も複雑です。
前述のように舌は舌を動かす外舌筋4種、舌の形を作る内舌筋4種からなり、これらの筋は12種ある脳神経の1つである舌下神経(Ⅻ)によりコントロールされます。

温・痛覚や舌特有の味覚についてはもっと複雑です。

温・痛覚

舌前2/3:舌神経(Ⅴ:三叉神経)
舌後1/3:舌咽神経(Ⅸ)

味覚

舌前2/3:鼓索神経(Ⅶ:顔面神経)
舌後1/3:舌咽神経(Ⅸ)

ちなみに嗅覚については嗅神経(Ⅰ)、腹部内臓の運動・知覚についてはほぼ迷走神経(Ⅹ)だけで支配していることから舌は非常に複雑なコントロールを必要とされていることが伺えます。

また舌神経は三叉神経の下顎神経(V3)の枝であり、舌神経は、顔面神経由来の鼓索神経と合流します。舌神経と合流した鼓索神経からの交感・副交感神経線維は顎下神経節を介して、唾液腺(顎下腺、舌下腺)に分布しています。
そのことから唾液や自律神経(交感・副交感神経)にも相互影響することになります。

★舌は体調があらわれる

舌は、淡いピンク色で少し白いコケがついている状態が良いです。
舌は、粘膜組織であるため、血流や体液の変化が真っ先に目立つ場所になります。また、身体の血管で直視できるのは舌下静脈のみです。
さらに、前述のように舌の知覚や運動は自律神経にも大きく影響を受けていますから、舌の状態を見るだけで、血流・体液・自律神経の働き具合が把握できます。
そして東洋医学でも気・血・水で状態を重視します。口の中はこれらがそろっている唯一の場所です。

西洋医学的にいうと‥
気は自律神経で舌の動きや形状をみます。
血は血流状態を指し、舌の色や静脈をみます。
水は水分量で唾液の量や舌の潤い具合をみます。

血流の状態

舌の表面が白い場合、血流量の減少や冷えをあらわします。貧血や冷え性の方に多いです。
舌の表面が赤い場所、血管に炎症を抱えている可能性も。風邪による発熱、食べすぎによる胃の熱、ストレス過剰の時などになります。
舌の表面が紫の場合、気や血の巡りが悪く鬱血してしまっています。
舌の裏の血管がボコボコの場合、血管が詰まりやすい状態。要注意。

体液(水分量)の状態がわかる

乾燥ぎみかむくみぎみかをみることができます。水分代謝が悪いと余剰水分がたまって舌がむくんで肥大化します。ひび割れが濃くなっていないか、いつもより大きくなっていないかなどを確認。むくみが強いと舌が肥大化して歯形に沿ってギザギザになることもあります。慢性疲労に陥りやすい。

自律神経の状態がわかる

過緊張やストレスが強いと、舌の筋肉運動がうまく働かなくなり言葉がつまってしまうこともあります。舌は自律神経の影響も大きく受けています。
リラックスした状態で舌を出し、横に曲がったりせずまっすぐ出せるか、余計な力が入らないかを確認。