顎二腹筋の痛み

いわゆる顎関節症の痛みは、顎関節や咬筋だけに限られるものではありません。
耳の下の顎骨のすぐ後ろあたりが痛くなったり、開口時に顎が外れそうな違和感が出ることもあります。それは顎ニ腹筋の過緊張が原因かもしれません。

顎関節症の分類について

顎関節症は、病変の所在部位によって、咀嚼筋の障害を示す「筋性」と、下顎窩、関節円板、下顎頭、関節包など関節に障害のある「関節性」の二つに大別することができます。
具体的には‥

・咀嚼筋痛障害【Ⅰ型】
・顎関節痛障害【Ⅱ型】
・顎関節円板障害【Ⅲ型】
・変形性顎関節症【Ⅳ型】

に分類されています。

詳しくみていきましょう。

咀嚼筋痛障害【Ⅰ】

ここで「咀嚼筋痛」は、口を開け閉めする運動や食べ物を咬んだり、咬みしめた時に発生する「運動時痛」を指します。自発痛や圧痛だけでは当たりません。
「咀嚼筋」として対象となる筋肉はまず「咬筋」と「側頭筋」、そして「外側翼突筋」と「内側翼突筋」の四種四対の筋肉です。さらに開口筋に属する「顎二腹筋」も含まれています。

顎ニ腹筋とは…?


顎二腹筋は舌骨に繋がる細長い中間の腱を挟み、前腹と後腹に分かれています。
前腹は舌骨を前上方に、後腹は後上方へ挙上し、舌骨固定時には下顎骨を後下方に引く作用を持っています。

ひとつの筋として命名されていますが、前腹と後腹では発生学的な由来が異なり別の神経に支配される珍しい筋です。前腹は通常三叉神経の枝である顎舌骨筋神経に、また後腹は通常顔面神経に支配されて複雑な指揮系統にあるので運動時の機能障害も起きやすいと考えられます。

このように顎ニ腹筋は、舌骨が固定されている時は開口のため下顎を後下方に引き寄せるように働き、物を飲み込む嚥下時は舌骨を挙上することから、舌骨の状態に大きく影響を受けています。

舌骨上筋群と舌骨下筋群の関係

舌骨の位置が重要となりますが、顎ニ腹筋を含む舌骨上筋群が舌骨を上方に引き上げる作用をもっているのに対して、舌骨下筋群は引き下げる作用を持っています。
舌骨下筋群は舌骨を下に引くことで、舌骨の安定性を提供していると考えられます。
一方で、舌骨下筋群が過剰に収縮してしまうことで舌骨を引き下げすぎてしまい、舌骨上筋群も緊張をさせてしまう場合があります。
そして舌骨下筋群は姿勢から受ける影響も強く、短縮・過剰収縮をしてしまいがちですので、不必要な緊張を抑制させる必要があります。

舌骨下筋群は甲状舌骨筋・胸骨舌骨筋・肩甲舌骨筋・胸骨甲状筋からなります。
その中で肩甲舌骨筋に着目をしてみましょう。

肩甲舌骨筋は肩甲骨と連結をしているので、肩甲骨の位置の変化によって舌骨の位置が影響をうけることになります。
不良姿勢で首や肩甲骨の位置が不良となり、肩甲舌骨筋が過剰に緊張したり・伸張されてしまいます。
すると舌骨を引き下げる作用が強くなるために、対抗する顎ニ腹筋をはじめとする舌骨上筋群に負担がかかり痛みや開口時の違和感が出ることになります。さらに嚥下動作の際の舌骨の挙上を阻害するので誤嚥のリスクが高まります。
舌骨が下がることで顎下のダブつきも生じてしまうことにもなってしまいます。


また舌骨が下がり顎ニ腹筋が過緊張を起こすと開口がスムーズに行かなくなり、顎関節の関節円板に付着する外側翼突筋に負担が掛かることで顎関節症が重くなることも考えられます。

これが目立たないですが地味に頑張っている顎二腹筋なのです。

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